“薄底”VS”厚底”!!ランニングシューズのコロンブスのタマゴ??

ロードバイクでは選手の使う機材が注目を集めることは珍しくありません。というよりも機材選定やそれに対する評価はロードレースを語る上で欠かせない要素の一つです。

しかし、最近ランニング業界でも、過去に例がないほど選手の使用シューズに注目が集まっています。

キーワードは「厚底」!!

何か話題になってるけど、何の騒ぎなの?何が珍しいの?って人向けに、自分の履いてみた感想を含めて、基本から考察していきたいと思います。

 

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ガリレオの天動説→地動説のような節目になる可能性も…

あのピンクのシューズは何?

先日行われたMGC(東京マラソン代表選考レース)で多くの人が持った疑問です。結論から言うと、アレはナイキの最新厚底シューズ「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%」(以下ネクスト%)なんですが、何故気になった人が多かったのか?

それは、出場選手ほとんどがそのシューズを履いていたからです!!

この大会は当然ナイキの主催で行われているわけではありませんし、履いている選手全員がナイキとスポンサー契約を結んでいるわけではありません。(大迫選手等ナイキの全面サポートを受けている選手もいますが)

なのに、まるで”ナイキ縛り”があるみたいに皆同じシューズを履いていたのは、今マラソン界で、ナイキの厚底シューズが一番記録が出やすいシューズだと考えられているからで、これは日本だけではなく世界のマラソン大会ででも同じです。

世界NO.1ランナーのキプチョゲ選手もナイキ社からシューズの提供を受けており、彼がマラソン世界記録を更新していることから、他のトップ選手もそれに倣っている状況なのです。

ランニングシューズの革命!!

さて、冷静な方はこう思うかもしれません。「とあるメーカーが優れた技術を実戦投入すれば、一時的にそのメーカーがシェアを占有することはよくあること。何を騒いでいるんだい?」と。

確かに、そうなのですが、昨今のナイキシューズが注目されているのは、ただ単に結果を残しているからではありません🙄

何十年も続いてきた「ランニングシューズの常識」を根本から覆すコンセプトだから、業界が騒然となっているのです。それは誰もが断念した”タマゴ立て”を簡単にやって見せたコロンブスのような衝撃を与えています。

 

昔ナイキは”エアー”で一世風靡しましたが、それ以来のというかそれ以上の衝撃が…

 

ランニングシューズの常識とは?

厚底=初心者向け(スピード出ない)、薄底=上級者向け(スピード出る)」というものです。

自分が知る限り、数十年の間それは覆せない”真理”のごとく唱えられてきました。(数十年と言いましたが、そもそも現代で言うところのマラソンシューズというカテゴリーが確立したのがそれ位だと思うので、マラソンシューズがが誕生して以来の”真理”だったと言えます。)

厚底というのはミッドソールと言われる緩衝材で構成される部分が厚いということです。ここが厚いと衝撃吸収性が高まります。フローリングに薄いタオルケットを敷くのと、厚いマットレスを敷いたのでは、歩いた感じがまるで違いますよね。タオルケットは歩く度ゴツゴツ衝撃が伝わるでしょうが、マットレスはフワフワ歩けます。

ランニング初心者は一般に体重が重く、更にその衝撃を受け止める足の強靭さもありません。ゆえに足に優しい”厚底”が良い(関節や筋肉への負担が減る)という理屈です。

それならば、上級者も足に優しいシューズを履けば良いではないかと思うかもしれませんが、衝撃を吸収するということは、反発力(推進力)を放棄するということでもあります。

サラサラした砂浜でダッシュすると足(関節)には優しくても、アスファルト等と比べてタイムは出ません。上級者ならば鍛錬によって足腰は強靭化され、足運びも上手なので、タイム(反発力)を優先して薄底を選択するという傾向がありました

この状況がナイキの厚底シューズにより一変しつつあります。

最新の厚底シューズ

ナイキの厚底シューズというのは「厚さは速さだ」などインパクトのあるキャッチコピーと共にナイキが展開しているシューズのシリーズです。

現在のフラッグシップは「ネクスト%」(この前身「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」が一般発売されたのがほんの一年前だったのですが…DogmaF10→F12のリリース位早い印象😅)。

このフラッグシップを中心に多数のラインナップがあります。

これが単に厚底で初心者の脚に優しいという話なら何の話題にもならないのですが、前述の通り世界のトップランナーがこぞって採用し、表彰台を独占しているという状況が衝撃的なんです。

 

左がナイキの厚底。右がアディダスの(セミ)薄底。

 

初めての厚底シューズの感想

正式な情報及び見解はナイキやその所属選手が色々な場で発言してますので、そちらをご覧ください。本来素人が語りきれる話でもないと思ってます。以下あくまでも自分の個人的な見解です。

自分のシューズは例のフラッグシップモデルの廉価版(一般人向け)の「ナイキ ズームフライ フライニット 」という物です。廉価版とは言え、形状やコンセプトは踏襲されており、両方使っている人もかなりフィーリングが似ているという感想を持つ人が多いです。(一番の違いはミッドソール素材が”ズームX”か”リアクト”かという点でしょうか。)

初めて履いたときの感想は「(足の高さが)高っ!そして凄い弾む!」でした。正味2cmとかそこらでしょうが、従来のシューズに比べて厚底な分、足(自分)が高く感じます。シークレットシューズみたい😜。

そして、跳ねてみるとポヨンポヨンします。
走り始めると、正直初めの数日は走りづらかったです。これまでのシューズが薄底系だったので、余計脚運びが難しいというか、5日目辺りで売りに出そうかと思ったほどです😰

ナイキの厚底=オートマティック?

しかし、です。従来の自分の脚運びはどちらかというとピッチ走行なのですが、履き始めて一週間後位にストライド走行気味に走った時、大変なことが起きました。

速い、速すぎるぞ、コイツ!😳

これまでのシューズだとキロ3分30秒位な感じで走ると、いつの間にかキロ3分15秒を切る位のペースになっています。(ちなみにこのペースは私にとってはオーバーペースで長くは持続しません。)

なるほど。厚底の威力を活かすためには、中に入っているカーボンプレートのシナリに従って、弾力性のある厚底ミッドソールを弾ませる必要がある、というのが自分の理解です。

恐らくこのプレートとミッドソールの配置やバランスがこのシューズの凄いところであり、本来矛盾するはずの「厚底なのに速い」を実現しているのでしょう。

ロードバイクで言うと、衝撃吸収性に優れているのに剛性も確保している完成度の高いカーボンフレームに乗っている感覚です。アルミフレームに比べると、トップクラスのシリアスなレースでは少なくない差が出てくると思います。

ただ、接地の衝撃が大きい(=得られる反発力も大きい)ストライド走行の方が恩恵が大きく、(厚底ゆえ)細かな接地感は得られなく、反応性においては鈍い感じがあるので、チョコチョコ走る素人ピッチ走行との相性は悪いのかなという印象です。

別の言い方をすれば、ストライド気味に走るトップランナーの走行データを徹底的に解析して、そのエネルギーの最大化をするために、ナイキが作り出したオートマティックシューズと言えるかもしれません。(想定フォームで走ると、自動的にシューズがサポートするが、その他の走り方は認めん。みたいな。)

色んな感想をお持ちの方がいるでしょうが、これが実際履いた自分の感想です。

 

ミッドソールの存在感が凄い

 

初心者におススメできるか?

ナイキの大迫選手もつい最近この点についてコメントしており、要旨は「トップランナー以外にもおススメできる。でも素材特性から、あまり耐久性はないので気をつけてね。」でした。

(大迫選手などトップランナーが履いている「ネクスト%」ですが、緩衝材として”ズームX”という素材が使われています。これがまた軽い上に凄い反発力を得られる素材らしいのですが、耐久性に難があり、レースを数回走ったら性能が極端に落ちるものらしいのです。

この意見が、真に彼自身のものか、スポンサーのナイキが用意した想定問答なのかは分かりません。

しかし、私は身近な知り合い(初心者)から相談されたら、ナイキの厚底を第一候補としては薦めません

その理由

「ネクスト%」はそもそも耐久性(コスト)の問題から、我々一般ランナーの練習用としては問題外ですが、それは置いといて。

個人的な見解ではストライド気味の走行が可能な体躯と技術を持った人間でないとその真価が発揮できないと思っていますので、初心者が「記録更新を狙うという目的」では恩恵が少ないと思います。

さらに、厚底の欠点ですが「捻挫のリスク」は高まります。大げさですが高下駄を履いているようなものですので。

特に使い始めは、自分も何度か危うく捻挫しかけました。(そこそこ走っている人間なので、舗装路を普通のシューズで走っていて捻挫しそうになることなんて滅多にないのですが。)

そりゃ、体が絞れて、走りなれているランナーにはあまり関係ないですが、初心者にとって捻挫は結構厄介なトラブルです。自分だったら、もっとサポート性が高く、足型がしっくりくる可能性が高いアシックスやミズノをおススメします

ただし、記録更新云々ではなく、楽しくウォーキング(ジョギング)をするという目的では初心者であっても選択肢の一つだと思います。走らなくても、”ポヨン”とした厚底シューズの独特の感覚というのは楽しめますので。

あと、初心者が記録更新(キロ6分位→キロ4分30秒位)を狙うならアディダスの”ブースト”シリーズの中級者向けをおススメします。このブーストという素材も、”ナイキの厚底”ほどではないものの、業界に新風を吹き込んだ優れた特性を持ったもので、当時自分も衝撃を受けました。(そして今でもメインシューズの一つです。)

 

ブーストフォーム搭載。良いシューズですよ

adidas boost

個人的な悩み

自分自身、これからどちらのシューズをメインにするか悩んでいます。薄底系の”アディゼロ ボストン ブースト”もとても良いシューズ。一方で使いこなせれば厚底の”ナイキ ズームフライ フライニット ”はタイム更新を「オートマティックに」サポートしてくれる予感がします。

引き続き練習では交互に使いつつも、やはりレースでは厚底に移行していこうかなぁ…

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特定の筋肉を疲れさせない意味でも練習では並行して使うってのもアリだね。